ブランディング

日産ブランドロゴのリニューアルを通して、ブランディングについて考える。

2020.09.24 木

日産ブランドロゴのリニューアルを通して、ブランディングについて考える。

ブランドロゴをリニューアルした日産。続いてコミュニケーションとプロダクト展開をスタート。

こんにちは!タケっちです。

しばらく車ネタが続いていますが、以前からアンテナを張っていた日産ブランドロゴのリニューアルですが、コミュニケーションにおいても広告展開が始まりました。キャッチフレーズは「やっちゃえ NISSAN 」。キャラクターはかつてトヨタカローラの広告に起用されてきた木村拓哉。矢沢永吉からバトンを渡されました。

キムタクはトヨタから日産へ、そしてYAZAWAからキムタクへ。この変更に消費者は戸惑うかもしれませんが、当然承知の上でしょう。またそのタイミングを狙ったように新型フェアレディZのプロトタイプも発表されました。

■日産の新しいブランドロゴ
●日産ストーリーズ
●日産ストーリーズ > 日産ブランドロゴ(画像)
日産ストーリーズより引用

というわけで、今回の日産のブランディングについて思ったことを記事にしたいと思います。当方、当プロジェクトの内部事情は存じ上げていません。あくまでイチ消費者としての見方と憶測に過ぎませんのであしからず。

以下、前回記事、企業スローガンやブランドスローガン。タグラインについて。の再掲です。

『日産のブランドロゴですが、リニューアルについて公式に発表されました。ブランディング規模は非常に大きいはずです。従前のコーポレートロゴ、コーポレートロゴタイプとされている部分まで及ぶのかわかりませんが、そうなるとかなりのボリュームです。各国語でのブランドコミュニケーションガイドライン・VIマニュアル、各種アイテム展開、ディーラー展開、等々の変更があり相当の規模になります。もちろん期間も相応です。』

■旧ブランドロゴ
●日産自動車ニュースルーム > 企業・ブランドロゴ
●日産旧ブランドロゴ(画像)
日産自動車ニュースルームより引用

日産の魂やルーツ。
シンボリックな製品ブランド、フェアレディZ。

 

■新型フェアレディZプロトタイプと日産WEBサイト

■新型フェアレディZプロトタイプと日産WEBサイト
日産WEBサイトより引用
●日産ストーリーズ >「フェアレディZ プロトタイプ」のデザイン誕生秘話
●Google画像検索

まず始めに新型フェアレディZについて。この新型Zはまだプロトタイプです。発売時期も未定。これをティザー広告でチラ見せしながら公開しましたが、もちろん日産ブランドロゴのリニューアルに合わせた戦略だと思いました。
この新型Z、エクステリアの画像しか見ていませんが、皆さんはどのような感想を持ったでしょうか?

エクステリアデザインについて、私個人的には「ステキ!」と思いました。今時、ダミーパーツで装飾過剰なデザインが溢れる中、非常にシンプルすっきり。ボンネット部分など初代Zのニュアンスを引き継ぎながら、現代のアメ車的なエッセンスも感じます。かつて初代Zは北米市場で受け入れられ爆発的に売れました。今もオーナーズクラブがあるそうです。日産の世界進出にもつながったその北米市場。そのため“アメ車感”は違和感ありません。むしろもう少しロングノーズであってほしかったな~と思ったくらいです。

ところでフェアレディZは日産ブランドにおける本質的コンセプトを体現する車であるはずです。消費者としてはGT-Rも同様に思えます。このどちらが日産の魂やルーツを表現する車と考えているのか、ぜひ日産に聞いてみたいところです。
当方が思うにZが日産のルーツを表現し、GT-Rはニスモを巻き込みながら“挑戦する魂”を体現。そんな気もします。

この日産におけるフェアレディZのように、企業にとって象徴的な製品というものは、実は必ずしも売り上げが大きいわけではありません。しかしこのような製品ブランドを失うと、その上位にある企業ブランドの本質まで失いかねません。もしそうなると、企業ブランドに大きな共感を抱いていた“ブランドファン”までも失います。企業ブランドから各製品まで、ブランド全体が脆弱になります。

以上のような理由があって、今回の新しい日産ブランドロゴ公開と時期を合わせ、日産の象徴ともいえるZを、しかも期待感を持たせながら公開したのは大きなブランド戦略の一環であり企業としての意志を感じ取ったわけです。

引き継いできた日産の理念・ルーツ。IoT社会への変容と日産のビジョン。新ブランドロゴがこれらを体現する。

■新しいブランドロゴのシステム
●日産ストーリーズ
●日産ストーリーズ > 日産ブランドロゴ(画像)
日産ストーリーズより引用

そして新しい日産ブランドロゴについて。この規模になると性別や年齢、地域を超え、社会全体に熱烈なファンがいるため、必ず賛否両論沸き起こります。企業規模が大きくなりその社会性も高くなるほど、親しみを持つ顧客層も厚く広範になります。それに伴いロゴリニューアルのインパクトは当然大きくなっていきます。

この日産ブランドロゴの開発は、「日産ストーリーズ」と題されたWEBページにそのプロジェクト詳細が掲載されています。

それによると2017年にブランド・アイデンティティとブランドロゴの変更を検討し始めたとのこと。電気自動車の発表に合わせたようですが、その背景にはIoT社会への変容が大きいと思います(※ IoT :Internet of Things~“モノ”のインターネット) 。
スマートシティの概念が登場して久しいですが、今ではその具体化を前提に社会が動いています。自動車産業も業種を越えて社会インフラに組み込むモビリティ事業を進めています。
そんな中、日産ブランドロゴのデザイン開発に向けて出したキーワードが「薄く、軽く、しなやか」。明らかに重厚長大イメージの脱却です。
そして様々な試行錯誤の上、生み出した答えが今回のブランドロゴというわけです。

『至誠天日を貫く』

「創業当初から一貫して引き継がれてきた日産の理念(至誠天日を貫く)を表現。」
基本的に企業のルーツは揺らいではいけません。日産もこの辺は揺らぎません。

デジタルと親和性が高いデザインへ

工業イメージからの脱却。上品で親しみやすいデザインへ移行。「日産が伝統的な自動車メーカーとしてだけでなく、モビリティとサービスを提供する会社へと進化していくことを示しています。」

ということで、硬質でハードな感じから柔和でソフトな感じになりました。“デジタルとの親和性”は車自体のデザインコンセプトでもベースになるものと思われます。

規模が大きい今後の取り組み

「この新しいロゴは、レターヘッドやディーラーの看板、そしてSNSやデジタル公告等、あらゆる媒体で展開していきます。媒体にあわせて4種類のロゴを使い分けることで、様々なコミュニケーションに柔軟に適応します。」

アイテム・コミュニケーション展開はこれからの取り組みのようです。規模はかなり大きいです。前回の記事でも触れている通り、相応の期間とコストを要します。

リニューアルはブランドフォント、コーポレートロゴにまで及ぶ。

■リニューアル前のコーポレートロゴ(プライマリ)
●日産自動車ニュースルーム > 企業・ブランドロゴ
●NISSAN MOTOR CORPORATIONコーポレートロゴ(画像)
日産自動車ニュースルームより引用

ブランドロゴが正式に公開されるまでは「このリニューアルはVI基本デザイン要素のどこまで及ぶのだろう?」などと考えていました。つまりブランド体系に関わる内容です。「日産事業ブランドまでなのか、それとも企業全体なのか?ルノーに関するシステムはどうなのか?また製品ブランドではどうか?」等々です。
この辺、日産自動車ニュースルームのWEBページを見るとリニューアル前の同社VIの構成に併せ、ブランド構造がうかがい知れます。

現状の日産WEBサイトを見ると、ヘッダーロゴが差し変わっています。そのため今は暫定的なものかもしれませんが、NISSAN MOTOR CORPORATIONコーポレートロゴまで及ぶようです。
これまで優先的に表示していたコーポレートロゴはダットサン、インフィニティ、ニッサンの3つのブランドロゴが並列に組み合わされていました。この場合、日産ブランドロゴをリニューアルすると、ダットサンとインフィニティのブランドロゴもリニューアルしないとデザイン的に不自然に思えます。統合性に課題が残されます。

とはいえダットサンやインフィニティのブランドロゴにまで統合を図ると、さらに取り組みの規模が拡大するのでコーポレートロゴの全面リニューアルには手をつけ難いです。WEBサイトへの展開前は「この辺どうするのかな~?」と考えていました。

WEBサイトでコーポレートロゴが差替えられたので、やはりコーポレートレベルでのリニューアルもこのタイミングです。なお今のコーポレートロゴは新規ですが、リニューアル前のセカンダリロゴに位置付けられていた形です。

また製品ブランドレベルでは、新しく投入された電気自動車、アリアのロゴタイプを見るとブランドロゴのデザイン要素が反映されています。
となると、車両のロゴタイプに使われるブランドフォントの開発まで及ぶかもしれません。ブランディングの観点からは当然検討課題にのぼり、検証の上で実施するのがベストですがコストはかかります。とはいえ日産はかつて全面的なVI開発と併せ、販売ディーラーではブルーステージ・レッドステージと整備しました。日産の企業規模なら実施するでしょう。というか、その辺はもう済んでいるかな?

ガイドラインの内容とボリュームについて。

もう昔の話になりますが、日産のVIガイドラインを拝見する機会がありました。当時のロゴも完成度が高かったですが、ガイドラインもかっこよかったです。当然ですがVIガイドラインのボリュームも相当なものでした。

今回はVI以外に、IoT社会を見据えた日産ブランドアイデンティティに関するコンテンツ、これも結構なボリュームとなるでしょう。またグローバル版と国内版、各国にローカライズしたバージョン、インフィニティとダットサン及びルノーに関する内容。色々考えるとそのボリュームは前回を超えるものになるでしょう。たぶん完遂するのは数年後。…大変です。ですが今回もキッチリ実施するでしょう。

以上、新しい日産ブランドロゴのお話でした。

ところで私の小学時代からの友人はZマニアでもあります。状態の良い初期型Z、どノーマルを購入し、そのためのガレージまで準備していました。エンジンルームを見せてもらいましたが当時の車は隙間が多いです。エンジンのボアアップ(排気量アップはZの定番です)くらいならやってみたいと言っていました。当時の車はオートバイのように色々できます。
また今でもZ32に乗っている知り合いもいます。皆さんの周りにもけっこういるでしょうね、 Zマニア。

一方、私は初代Zのみならずトヨタ2000GTも好きです。昔はがんばればまだ買える値段でした。しかし今はもはや不可能な値段になってます。完全に舐めていました。…なのでトミカを狙っています。

それではまた次回もお楽しみに。

 

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  • この記事を書いた人

イチロー

これまで広く業界を問わずCIとブランディングにおけるデザイン、またアイデンティティの創造・立案支援、クリエイティブ・デザインに関する講義等に従事してまいりました。 その間、私たちの社会環境や価値観はどんどん変貌し、今後もDX推進やVRなど新たなコミュニケーション手段により、戦略をはじめデザインする媒体も感性面も変わり続けます。その絶え間ない変遷の中、人の心にある普遍的価値にしっかり立脚し、目前に広がる社会の新たな展開と可能性を見据え、共助共栄の下、日々の業務に携わっていきたいと思います。

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